めぐみ保育園

お知らせ:めぐみだより

《人と人の「つながり」を考える》10月のめぐみだより

《人と人の「つながり」を考える》
先日「友だち幻想」という故 菅野仁さんの本がテレビで紹介されていました。社会学者である氏が10年前に友だち関係に悩む我が子に向けて書かかれたとあります。「みんな仲良くすること」が当たり前の社会に、いじめや引きこもり、「ライン即レス(返事)」への不安等が今もなお生み出されているように思います。上手く関われないのは自分のせい?コミュニケーション不足?大人になれば、人と付き合わなくても生きられる?人を阻害して陰口を言う人がいるかもしれません。互いに助け合って生きるためにつながっていた昔と違い、今はお金があれば何でもできるし、一人でも生きられる。でもやっぱり寂しい!「群れる」ことにより不安から逃れようとする「同調圧力」から一歩踏み出て、異質なものとどう「並存」「共在」できるかが大切であると言われます。気に入らない相手ともお互い傷つけ合わない形で共在する。そのためにルールがあります。縛るためのルールでなく自由になるためのルールです。間違っても「やっつけてこい!」「負けるな!」とは言わないでほしいですね。子どもたちの苦しみはそこにあります。でも子どもを持つ親にとって、うちの子がいじめられないか?とっても不安です。信頼できる友だちとて、完全受容はむつかしい。それはお互いのことを理解しようとして深めていく関係です。
保育園の中でも、「友だちや仲間を大切に」「いじめはダメ」と言うのですが、それは単なる規範意識ではなく、互いが安心して生きるためのルールです。強いものが勝つルールではありません。付き合うことが難しい場合は距離をおく。でも「シカト」「仲間外れ」は攻撃と同じなので、あいさつや必要な行動はするといった距離感かもしれません。
幼い子どもたちは、まだまだ言葉や、自分の表現を学んでいる時期です。ことばの使い方やどのように関わっていくのか身をもって学んでいきます。自分の発する言葉がどのように相手に伝わっているのか?傷つけたりしていないか?上手く遊べた経験、ケンカした経験をたくさん重ね、友だちを作っていきます。気の合わない場合は、言葉や表現が不十分だからなのか、どう付き合っていけば上手く一緒に過ごせるのか?幼児では年齢の違うお友だちと生活し、又お年寄りや小学生、中学生ともたくさん接する機会をもっています。
育ちの中で人と人の〈つながり〉をどのように作っていけるのか。判断能力や他者との関係性をつくっていける能力を大人は見極めながらサポートすることが大切です。
本の中で作者がコミュニケーションを阻害する言葉を挙げています。①「ムカつく」「うざい」②「ていうか」③「チョー」「カワイイ」「ヤバイ」④「キャラかぶる」「KY」-これらの不快感の感情をすぐに言語化できるツールを、10年も前から言われていたことにも驚きでした。異質な他者を知ることなく〈逃げのアイテム〉として言葉が機能し、多用することによって他者が帯びる異質性に最初から背を向けてしまいます。自分と違った「人」、「国」「民族」や「障がい」「性」からも距離を置いて受け入れない姿勢と同様に、人としての存在を軽く見たり、傷つけることになってしまいます。改めて子どもたちにことばの持つ力も、大切に伝えていきたいと思った一冊でした。              奥田輝代